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フライフィッシングのブログ「アートライズ」

命を映す水面(みなも)-フライフィッシング小説

第一章:はじまりの渓流

春の終わり、山の空気がほんの少しだけぬるくなる頃。
私は、久しぶりに渓流へ向かった。

雪代も落ち着いて、水は澄み、石の一つひとつが透けて見える。
川沿いの木々は若葉をまとい、風が吹くたびに淡い緑がさわさわと揺れた。

胸ポケットには、小さなフライボックスが一つ。
中には、何度も使ったフライが数本だけ入っている。
今日の釣りは、それでじゅうぶんだと思った。

足元の水に目を落とすと、小さな影が石の下をすばやく動いた。
水生昆虫のニンフ。おそらくヒラタカゲロウの仲間だろう。
身体をくねらせながら、水の流れに逆らうように生きている。

そんな小さな命の姿に、私はしばらく見入ってしまった。

この渓では、魚も虫も、そして草や木でさえも、当たり前のように命をつないでいる。
誰かに見られることもなく、ただ、静かに。

私はフライロッドを組み、ボックスの中から一つだけフライを選んだ。
少し色が褪せたエルクヘアカディス。だけど、今の流れにはちょうどよさそうだった。

最初のポイントは、倒木の奥にできた小さな反転流。
昔から好きな場所だ。

キャストをして、フライがふわりと着水する。
流れに乗って、ゆっくりとカーブを描いたそのとき、水面がわずかに揺れた。

一瞬の静寂。
次の瞬間、銀色の影が水面を割って、フライが吸い込まれた。

合わせたロッドが、心地よい重みとともにしなった。

「ありがとう」

自然と、そんな言葉がこぼれた。


第二章:ハッチの季節

川に通いはじめて、もう何度目になるだろうか。
季節は進み、渓の景色がほんの少しだけ変わっていた。

木々の緑は濃さを増し、水音も軽やかになってきたように感じる。
そして、川面にふわふわと浮かぶものが増えていた。
小さな翅を持った、か弱い虫たち。
水の中で過ごした時間を終え、いま、空へと旅立とうとしている。

「ハッチが始まったな」

思わず声が漏れる。
この時期だけに見られる、命の大移動。
ほんの一瞬のタイミングで、無数の水生昆虫たちが水面へと浮かび上がり、次々に羽を広げていく。

その動きに、魚たちも敏感に反応していた。

流れの奥から、わずかに水面がざわつく。
空気を吸うような、静かな捕食音。
水中の命と空へ向かう命が交差する、そのわずかな一瞬を、魚は決して見逃さない。

私はしばらく、ただその様子を眺めていた。
釣り竿を持ったまま、水に立ち尽くす。

釣りたいという気持ちよりも、見ていたいという思いのほうが強かった。
水面を漂う一匹の虫、その背中がふるえ、翅が開くと、ふわりと風に乗って飛び立っていく。

でも、中にはうまく羽化できず、水面でもがくものもいる。
翅が水をはじけずに、体ごと沈んでいってしまうものもいる。

――うまく飛べたものも、飛べなかったものも、すべてが命。

私のそばを、一羽の何かがかすめていった。
透き通るような翅を光にかざしながら、まるでこの場所の守り人のようだった。

私はようやくフライを結び直す。
今日選んだのは、薄いオリーブ色のダン。
水面に張りつくような姿が、このハッチの時期にぴったりだと思った。

数投のあと、フライが水面を流れはじめる。

そして――またひとつ、命が動いた。


第三章:沈黙の流れと気配

その日は、朝から曇っていた。
渓に着いても、鳥の声すらあまり聞こえない。
川は変わらずに流れているのに、空気がどこか重たく感じた。

こういう日もある。
フライフィッシングをしていれば、いや、自然と向き合っていれば、何度でも。

水面には虫の姿がない。
羽化も、飛翔も、捕食音もない。

私はそれでもロッドを組み、フライを結び流れに立った。
岸辺の石に腰をおろし、しばらく水を眺めていた。
魚は見えない。虫も見えない。
でも、何かがいる。

小さな流れの中にある石を、目で追っていくと、その裏にひと筋の揺らぎがあった。
川底の砂がわずかに舞い上がっている。
きっと、魚がそこにじっとしているのだ。
姿は見えないけれど、呼吸のような動きがある。

沈黙の中で、命は動いている。
声もなく、派手な動きもなく、ただ流れに逆らいながら、じっと、息をしている。

私は、フライを変えることにした。
流れの中に自然と沈む、ビーズヘッドのヘアーズイヤー。
目立たない、地味なフライだけれど、今日の水にはちょうどいい気がした。

ラインを沈め、フライを流す。
数投のあと、わずかな手応えがロッドに伝わった。

合わせたが、乗らなかった。

だけど、それでよかった。
たしかに、そこに魚がいた。
その手応えが、今日は十分だった。

渓の沈黙は、決して「無」ではない。
目には見えない、音もない、それでも確かに流れている「気配」というものがある。

私は少し笑ってしまった。
こんな日も、なんだか好きだ。


第四章:命の舞と、食うもの食われるもの

朝の光が、川面を鏡のように照らしていた。
風はなく、水面は静かで、まるで時間が止まっているようにも見える。

けれど私は知っている。
この静けさの中にこそ、最も濃密な命のやりとりがあることを。

そろそろ、ハッチのピークが近づく時間だった。
私は川縁にしゃがみこみ、水面をじっと見つめる。

しばらくすると、小さな虫が一匹、ふわりと浮かび上がってきた。
水の中で過ごした時を終え、最後の姿に変わる瞬間。
翅が水を弾き、体が乾くと、空へ向かって飛び立つ。

そのわずか一瞬を、下流から迫る魚が逃さない。
水面を切り裂いて跳ね上がり、空へ出ようとした命を、音もなく飲み込んでいった。

「……これが自然のままの姿なんだな」

私はフライを選びながら、虫と魚のやり取りをしばらく眺めていた。

虫は生きようとし、魚もまた生きるために食う。
そのどちらも、誰が正しいわけではない。
どちらも必死で、どちらも尊い。

私は羽化直前のダンに似せたフライを選んだ。
水面に張りつくように漂うそれは、ちょうど食われる寸前の虫の姿を模している。

フライを投げ、水面を流す。
魚が反応するのは、わずかな姿勢の崩れ、流れへの馴染み方、光の当たり方。
完璧なフライには見向きもしないのに、不完全な動きには迷いなく飛びついてくる。

何度かのキャストのあと、ひときわ大きなライズが起きた。
私は一拍おいてから合わせる。

ロッドがぐっと曲がり、水面が割れた。

魚が暴れる。その姿がきらりと光る。
やがて力を抜いたところで、私はそっと魚を寄せ、水中に手を入れて支えた。

渓流の女王――たぶんヤマメだ。
銀と青のまだら模様に、いくつかの朱点。
その体が、私の手の中でゆっくり呼吸をしている。

「よく来てくれたな」

私は魚にそう声をかけ、針を外すと、そっと水に戻した。
水に溶けるように姿が消えていったその背中を、しばらく見送っていた。

この川には、命が満ちている。
捕るものと、捕られるもの。
その一瞬の交差に、確かな「生」がある。

そしてそれは、いつでも美しいものだ。


第五章:解き放たれるとき

渓を訪れてから、どれほどの時が過ぎたのだろう。
気づけば、季節はゆっくりと次の扉を開けようとしていた。

川沿いの草は少し背を伸ばし、風が運んでくる香りにも、どこか夏の気配が混じっている。
今日が、ひとまずの区切りになる気がしていた。

いつものようにロッドを組み、慎重にフライを結んだ。
けれど、今日はあまり釣ることに執着はなかった。
ただ、流れに立ちたかった。
水音を聞き、葉の揺れる音に耳をすませたかった。

川の水は、今日も透明だった。
そこに生きる虫たちも、魚も、何ひとつ語らず、ただそれぞれの営みを続けていた。

私もまた、その一部でありたかった。

小さな瀬をひとつ越え、ゆるやかに蛇行する深みの手前で立ち止まる。
何度も魚をかけた場所だったが、今日はフライを流さず、その場に腰をおろした。

水は、変わらずに流れている。
水面に映る空には、うっすらと雲がかかっていた。

虫が一匹、私の袖にとまった。
小さなカディス。まだ翅は完全に乾いていないようで、何度も小さく震えていた。

私は指をそっと差し出し、その背に触れないように見守った。
しばらくすると、翅がふるふると動き出し、ふわりと空へ浮かび上がっていった。

その姿を見上げながら、私は思った。

——ああ、自分も何かを手放して、次の場所へ向かっていくのかもしれないな、と。

これまで、釣りは技術だと思っていた。
知識であり、経験であり、腕であると。

けれど、ここで過ごした時間の中で、それだけではないと気づいた。
魚が釣れる日も、釣れない日も、命の循環は続いている。
水生昆虫が生まれ、羽化し、捕食される。
魚が食べ、鳥が狙い、命がまた命を支える。

そこにあるのは、ただ「生きる」という、ひとつの奇跡だった。

私はそっと立ち上がり、ロッドを畳んだ。
そして川へ背を向け、ゆっくりと林道へ戻っていく。

振り返ると、渓は何も言わずに、ただ静かに流れていた。

私の中に、言葉にできない何かが残った。

それはきっと、ひとつの祈りのようなものだったのだと思う。


しばらくして、私はあの川にまた行こうと思っている。

釣りのためだけじゃない。
命の声を、あの静かな水の中で、もう一度聴いてみたくなったからだ。

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